君と恋する通学時間


このままで、いいのかな。

なにかを変えるには勇気と覚悟が必要で、それは簡単なことじゃない。

だから難しくて、悩むんだ。

でもモヤモヤするのは、このままでいいと思っていない証拠。

変わりたいと思っている証拠。

具体的になにをどうするかは、わからないままだけれど。


五月五日、今日は私の誕生日。


お父さんとお母さんはお店があるし、誕生日だからって予定が入っているわけでもない。

でもせっかくだから外に出てみることにした。

行く当てなんかないけど、自然と足が向いてしまうのはいつもの通学路。

手ぶらでスマホさえ持たずに、歩いてゆっくり駅へと向かう。

普段なら足を止めて見ることのない景色。

木々が生い茂る道路沿いの道を、時間をかけながら歩いた。

ザワザワと葉っぱが擦れる音、新緑の香り。

いつもとは少しちがう細い道に入ってみた。

アスファルトの隙間から咲くタンポポを見つけて、しゃがみこんでそれを見つめた。

強いね、きみは。

必死に生きてるように見える。

私はそこまで必死になにかをしたことがあったかな。

いつでも胸を張って、自分が好きな自分でいる。

そう思って生きてきたはずだった。

でもいつのまにか、そんなことは忘れていた。

臆病になっていた。

私は……なにもしてないじゃん。

ただ傷つくことを恐れて、逃げ続けている。

そんな自分は嫌だ。

もっと強くなりたい。

変わりたい。

振られたっていい。

傷ついたっていい。

伝えなきゃ、なにも始まらない。

傷つくのは今じゃない。

あとでいいんだ。

そう思ったら、視界がパアッと明るく開けていくような感覚に包まれた。


どんどんクリアになって、曇っていた心に晴れ間が広がる。

純粋に心の底から小鳥遊君に会いたい。

そう思った。