君と恋する通学時間


金曜日。

放課後になってもなんだか帰る気になれず、誰もいない教室でぼんやりしていた。

辺りはオレンジ色に染まって、もうすぐ日が暮れようとしている。

そろそろ帰らなきゃ。

そう思ってカバンを持って立ち上がる。

教室を出たところで、ずっとそこにいたのか、正斗が壁にもたれて立っていた。

いつもはヘラヘラ笑ってバカなことを言っているのに、今は珍しく真剣な表情だ。

「やっぱ元気ねーな。見てて心配になる」

「そんなことないよ、普通だって」

「俺、おまえのことが好きだから。中学の時から、ずっと見てきたからわかるんだ」

「え……やめてよ。また、そんな冗談ばっか」

「未愛が冗談にしたかったらそれまでだけど、俺は本気だから」

真面目で真剣な正斗の表情。

瞳は揺れていて、緊張しているのかへんに顔に力が入っているように見える。

冗談なんかで済ましちゃダメだ。正斗は本気なんだ。

「ごめん……私、好きな人がいるの。正斗のことは、友達にしか思えない」

胸が苦しくなった。

正斗の気持ちはすごく嬉しい。

でも、ごめんね。ごめんなさい。

私は……私は……。

こんな時に浮かんだのは小鳥遊君の顔。


「いや、うん、わかってた。野村や梅脇と話してる内容からして、そうだろうなって。これは、俺のケジメっつーか。綺麗さっぱり振られて、前に進みたかったんだ」


ツラいはずなのに、正斗は笑っていた。

実際には傷ついているんだろうけれど、それを感じさせないどころか、どこかスッキリしたような表情さえ浮かべている。

「あ、気まずくなるのはなしだからな。今まで通り普通にしてろよ。俺と未愛は、一 生のダチだからな!」


私に気を遣わせないよう、ビシッとそう言い切る。

強いな、すごいな、たくましいな、正斗は。

逆の立場なら、私はそんな風に言えない。

気まずくて、当分は普通にできないよ。


それなのに、ちゃんと私のことを考えてくれているところがすごいと思った。

正斗は自分なりに考えて前に進もうとしている。  
いつまでもうじうじしているだけの私とは大ちがいだ。