その日の帰り、電車が海風学園の最寄り駅に停車した。
停車した時に外にいた小鳥遊君と目が合ってしまい、動けなくなった。
いつもは放課後に出くわすことなんてなかったのに、どうして今日に限って会っちゃうの。
気まずくてパッと目をそらしたのは、私のほう。
うつむいていると、小鳥遊君のスニーカーが私のローファーの真ん前で止まった。
「おつかれ」
「あ……うん」
顔を上げることができなくて、気まずさから声も小さくなってしまう。
こんな自分は嫌なのに、小鳥遊君を前にするとうまく話すことができない。
「俺、なんかした? もしかして、避けられてる?」
朝の私の態度といい、今といい、普通にしなきゃと思えば思うほど不自然になる。
「そんなこと、ないよ」
「俺、もっと森口と仲良くなりたいんだけど」
「え?」
なんで?
どうして?
その気持ちは純粋に嬉しい。
でも、そんなことはすぐに吹き飛んだ。
そっか、そうだよ。
私と仲良くなったら、女の子の好きなものや気持ちが聞けるもんね。
あの子となにかあった時や、困った時や悩んだ時、私に相談しやすいから……だよね?
ただ話せるだけでよかった。
それ以上はなにも望んでいないはずだった。
小鳥遊君の幸せを願っていた……はずだった。
でも近づけば近づくほど、どんどん欲張りになっていく自分がいた。
小鳥遊君の恋を素直に応援することなんかできない。
私は自分のことしか考えられない嫌な奴だ。
そんな醜い部分を小鳥遊君に見られたくない。
こんな思いをするのなら、見ているだけの時のほうがよかったよ。
ジワっと涙がにじんで、こぼれ落ちそうになる。
「ごめん……私は、これ以上はもう……無理だよ」
「え? あ、おい」
電車が発車したと同時に小鳥遊君のそばから離れて、涙を拭う。
ヒリヒリ、ズキズキ。
傷口がどんどん広がっていくのを感じた。



