「ユウ……」
「もー、行くわ。そういえば美蓮ちゃん、筆箱忘れてたよ」
先程の弱々しい声と打って変わり、いつものような抑揚のない声でポン、とわたしの手に筆箱を置いて、彼はわたしに甘酸っぱい気持ちだけを残して去っていった。
ユウが出ていってからヘナヘナと床に座り込んだ。
なんだったの……?
あんな弱々しいユウなんて滅多に見たことがない。
最近のユウはおかしい。
でも、おかしいからといってわたしだけを見てくれているわけじゃない。
手に残された筆箱を意味もなくじっと見つめる。
もしかして、もしかしてだけれど、ユウはわたしにこれを渡すために話しかけてくれた、とか?
そんなの放っておけばいいのに。
わたしが筆箱を忘れたってユウは何も困らないのに。
ユウに優しくされるたびにわたしのバカな心は期待しちゃうんだよ。
「ユウ、好きだよ……」
本人には言えない言葉をそっと呟いた。
いつか笑って本人に言える日が来たらいいのに、なんて叶いもしない願いを抱いて私は床に落ちていた教科書を拾って、移動教室先へと向かった。



