たぶん、わたしの両親が今日は仕事で帰ってくるのが遅くなるのを知っているから言ってくれているんだろう。
「わかったよ。食べたら帰るからね」
「りょー」
わたしはこのわがままな幼なじみ、優飛ことユウにずっと片想いをしている。
わたしの気持ちなんてどうせ彼は知らない。
それに、ユウは学校ではわたしに冷たいしこんなに甘えてはこない。彼が甘えるのはふたりきりのときだけ。
その時間が実はとても嬉しいなんて本人には言わない。
でも、わたしの恋は叶わない。
だって、
「あ、栞ちゃんからだ」
彼には彼女がいるから。
しかも付き合って半年ほどが経つ。
それなのにわたしたちの関係はずっと同じ。
彼女ができてもユウはわたしに甘えてくる。
「早くでなよ」
電話に出ようとはしないユウに一言声をかける。
「んー、いいや」
「は?彼女からの電話じゃん」
「だからなに?」
彼女からの電話なんだから普通でるでしょ。
なのに、この男は無視するの?