「ふふん」
一文だけのメモに、自分もたった一言だけ書き記す。
シンプルさを真似たけれど、はしょりすぎて知らない人が見れば一体なんの文なんだかわからない。
これだけじゃ意味が伝わらないかも、と思わないこともなかったが、それは向こうも同じなのだからお相子ということにする。
開いたときよりやや余白が少なくなったメモを綺麗にたたみ直して、そっと本棚の奥へ忍ばせる。勿論、ここに納まるはずだった本もしっかりと仕舞った。
このメモがいつからここにあって、この本がいつからここに無かったのかはわからない。もしかしたら最近かもしれないし、何年も、何十年も前かもしれない。もしそんなに昔のメモだったら、犯人もこのイタズラのことを忘れているだろう。
