耐雪梅花麗〜愛〜

ちなみに、今の幕府はフランス式軍学を取り入れたとはいえ、まだ、日本古来の軍学が主流だった。だから、会津はおろか、幕府を変えてしまうような発言である。

「まあ、そうだなぁ。私は大樹公が気の毒でならんのだ。」

「と言いますと。」

「ああ、天子様に攘夷を迫られ、老中にも利用され、民衆からもこの有様だ。それに体調を崩されてもう長い。まだお若いと言うのに。」

肥後守様はそう言った。そして、肥後守様はめまいがしたのだろう。一瞬、ふらっとしたように見えた。

「大丈夫ですか、肥後守様。」

と、誠華姉が言った。

「すまない、生憎、私も体が弱くてな。」

「いえ。出しゃばりすぎたことを申しますが、少し休まれた方がよろしいと思います。春輔さんの場合、心身の疲労が原因と思われますので……。」

「医学の心得があるのか、頼もしい限りだ。」

「ありがとうございます!」

「あ、もうこんな時間じゃないか。少ししたら帰るよ。もう暗いしね。」

肥後守様の胸元には懐中時計があった。

「あの、肥後守様、先程のこともありますし、御駕籠で帰られた方が宜しいのでは。」

と、近藤局長が言った。肥後守様は少し黙ったが、

「……そうするよ。」

と言った。

「では、何名かを気付かれないように警護につけますので、それでお戻りください。くれぐれもお体ご自愛ください。」

「ああ。女将さん!駕籠を頼みます!」

そう言って、駕籠の準備を始めた。さあ、誰が警護を?

「誠華君と、トシ、頼む。」

「わかりました。」

「ああ、わかったよ。」

2人とも、うるさくない。そして強い。その上策略家である。だからこのふたりなのだろう。