その後、わたしを抱きしめていた手は離れ、俊くんのポケットに入ったままのわたしの左手を俊くんの右手が掴んだ。


『咲貴ちゃん、俺のこと好きになる可能性ある?バイトない日は毎日遊んで、バイトの日は毎日電話して、バイト終わってちょっとだけ会って。そんなことしたら好きになる??』


バイトは辞めないんだ。

よかった。

それにしても毎日電話もする気なんだ・・。

毎日会いにくる気なんだ・・・。


でもそう言ったときの俊くんの表情はさっきのウサギじゃなく、ペットショップにいる可愛い仔犬のようだった。


『わかんない。なるのかな?』


『なるよ、きっと。』


すごい自信。


自分のことを振り向かせるってこと、この前も言ってたけど自信満々なんだろうな。


『じゃあそうなったら付き合う。それでいい??』


『いやだ。』


きっぱりと子どものように言った。


『じゃあどうするの??』

『今。付き合う。』



『子どもかっ!!』


このツッコミに俊くんは笑ったけど考えは曲げなかった。


『今、付き合う。うんって言って。』


『まだ無理。』


この押し問答を何十回も繰り返した。


最後のほうは笑っていたけど、結局わたしは押しに弱い。


『もう無理。負けた。わかった。付き合うよ。』


笑いながらだけど、とうとう言ってしまった。