『お前が決めろよ。俺はもうどっちでもいい。』


氷のような冷たい表情でまたポケットからタバコを出し、火をつけた。

一瞬、孝浩くんの顔がオレンジ色に照らされた。


『どっちでもいいって・・・。大人だね。わたしなら他の男とキスした女とは付き合えなくなっちゃうよ。』


『それだけお前が好きだってことだろうが。』


『好きならどっちでもいいなんて言い方しないじゃない。』


『お前のこと考えてんだよ。尾上が好きなんだろ??尾上に行きたいんだろ??その選択肢をやるって言ってんだよ。言わせんなよ。』



わたしはやっぱりバカだ。

彼はやっぱり優しい人だったって今気付いた。

優しい表情をしているとわたしが孝浩くんのところにいなきゃいけないって考えてしまいそうだから、きっと怖い表情、荒っぽい口調で話してるんだ。

わたしのことを考えて、自分の感情は押し殺していたなんて・・・。



今は孝浩くんは氷のような表情がさっきと一変して切ない表情になっていた。

何も言わないわたしにまだ続けた。


『咲貴が、俺のそばにいるんだったら絶対そんな目には二度と遭わせない。全て許すよ。今回のこと。』


わたしは全身が震えたのがわかった。


確かに寒いけど、きっと寒さではない。


この人の愛に応えられる自信がないから。

また傷つけてしまうから。



孝浩くんのことは好き。

本当に一緒にいて楽しいし、素直になれる。

愛しいと思うことだってよくある。



でも━━・・・


俊くんが来てからわたしは変わった。

戸惑ったり、ドキドキしたり、目で追ったり、追いかけたり。


さっきの俊くんのばいばい。と言う言葉もわたしの心にまだ響いている。