バイトが終わるとロッカーでメモ帳に汚い字を並べ、愛子ちゃんに手渡した。


【今日はこんな空気にさせてごめんね。もう少ししてちゃんと説明する。ごめん。】

この字を見た後、愛子ちゃんはわたしの目を見て頷いた。

とても、優しい目。

心配してくれているというのがすぐにわかった。

そして愛子ちゃんもメモ帳を取り出し、ボールペンの滑る音を立てた。

わたしの前に出した紙には

【大丈夫?心配だけど待ってる。何があってるかわかんないけど頑張れ!!】

と書いてあった。

愛子ちゃんを見るとさっきの表情じゃなく、励ましているような強い顔になっていた。

わたしは微笑みながら頷いた。


着替えた後、ロッカーを出ると足取りがすごく重かった。

今から・・・話、しなきゃいけないだろうから。

足になにか縛り付けて歩いているように進むのが遅かった。

でも、そんなわたしに気付いて愛子ちゃんもゆっくり進んでくれた。



外に出ると案の定、灰皿のところで孝浩くん、そして俊くんがいた。


2人はもちろん無言。


『お疲れ様でした。俊、帰ろう!!!話がある。』

『えーっ、無理。』

そう言う俊くんを愛子ちゃんは無理矢理引っ張って行ってくれた。

きっと話なんてないだろうけどわたしたちを2人にしなきゃいけないって思ったんだろうな。


『お疲れ、明日ね。』


わたしは愛子ちゃんに言ったけど俊くんが

『ばいばい・・。』

と小さな声で呟いた。



きっと、見てる。

タバコを吸いながらわたしを。



今わたしは崖の先端にいるような状態だろう。

この先はない。

戻って話すしか。


気合いを入れるように手に拳を作ってわたしは孝浩くんの方を向いた。