さっきまでのわたしの中は不安だった。


でも今は恐怖。


今の言葉は絶対に孝浩くんに聞こえていた。

完全にバレただろう。

この傷が俊くんと関係あることは。


無視してわたしは俊くんの横を走り去ることしかできなかった。


後ろからの孝浩くんの視線が背中に突き刺さっているような気がした。

見てないけどわかる。


ドガッ。


その時、大きな物音が聞こえた。

まるで誰かが廊下に置いてある棚にぶつかるような音。


なんとなくわかった。

その音の正体は。

でも、わたしは戻ることはできなかった。


それどころか、売り場へ向かうわたしの足を加速させいていた。



売り場に出るとパートの方たちからたくさんの言葉をもらった。


『綺麗なお顔が台無しよ。』

『ちゃんと冷やしたの??』

店長は昨日の件と関係があると気付いたのか、気付かないのかわからないが何も触れなかった。


そのとき坂上さんがカウンターに入ってきた。

マイペースな坂上さんがどう見ても慌てていた感じだった。


『新垣さん、原口が尾上殴ってたけど・・・それ・・尾上に??』

そう言って坂上さんが口を止めた。


『いえ、違いますけど。』


そう言うと坂上さんはえっ??て顔をしたけど別にどうでもいいかという感じで売り場へ移動していった。


やっぱり・・・。


完全に誤解してるし。

でもわたしはさっきの場所に戻ることはしなかった。


商品の返却をした。