愛のかたち

それから俊くんは首元から手を離した。

パニくっていた頭がちょっとずつ冷静に考え始めた頃、本当にこの公園は人通りが少ないんだと今頃実感した。

誰1人通らない。


この前も、さっきも、そして今も冷静にここを見渡していなかった。


『俊くん、わたし孝浩くんと付き合ってるんだよ??』


でも俊くんは笑っていて、余裕綽綽というような顔つきをしていた。


『関係ないよ。じゃ、帰ろうか。それともまだここいて続きする??』


わたしはかなりのスピードで首を振った。

それにまた俊くんはクスッと笑った表情をした。


こんなに上から目線な俊くんは初めてな気がする。

もちろん俊くんのこの上から目線の言動、表現は余裕からきている。


この目、そしてあの唇。

見ているともっと揺らいでしまうような気がした。


『帰るね。明日バイト無理しないようにしてね。』


わたしは原付の鍵を回してメットインを開け、ヘルメットを取り出した。


取ろうとしたとき、前にいた俊くんがわたしの手をのけ、メットを手に取りわたしの頭にかぶせた。


アゴ紐のところのバックルをカチッと付けた後、またいきなりキスをしてきた。

ただ、触れてすぐ離れるだけのキス。


わたしは唇を手で押さえ、俊くんを見上げると


『また明日ね。』

またクスッと笑った表情で言い放ち、俊くんもバイクの方へ歩いた。


わたしは何も言わず、エンジンを付け、走り去った。


きっと顔は赤かったと思う。


孝浩くんへの罪悪感はあったけど・・・嫌じゃなかった。