━━・・でも。

知香ちゃんはその数日後に堕胎した。

ただ、彼氏に捨てられたことで自信がなくなったということだった。

手術費はあの男が全額出したらしい。

当然だけど。


知香ちゃんが数日前に見せた、母親のような顔は絶対嘘ではなかった。

あのとき言った言葉はわたしたちは100%本心だったと思っている。

理沙ちゃんは

『かわいそうだけど、よかったのかもしれない。経済的に無理だよ。』

と悲しそうに言っていた。

わたしもその言葉に頷いた。



知香ちゃんは暫く部屋にこもって泣き続け、ただでさえ細い体が更に細くなりすごく心配だった。

そしてやっと外に連れ出した時は、ベビーカーに乗った赤ちゃんを目で追って悲しそうな顔をしていた。

わたしと理沙ちゃんは学校に行きながらバイトしながら知香ちゃんを見守っていて、それに悪いと思った知香ちゃんは1ヶ月ほどしてようやく元の姿に戻った。

無理をしていたけど、わたしたちはそんな知香ちゃんを応援することしかできないから無理しているということに気付かないフリをしていた。

そのうち、元気になることを信じて。

ただ、知香ちゃんの子どもの命日の9月16日はわたしたちの忘れられない日になってしまった。