今読んでいる小説も、部活を頑張る生徒が主人公のものだ。

「紅葉ちゃん、今は部活かぁ…」

紅葉は小学生から空手を習っていて、大会で優勝するほどの実力の持ち主だ。だから、男子たちも迂闊に手を出せない。

前も何度も紅葉の大会を見に言ったことがある。汗を流しながら必死に相手と闘う紅葉の姿は、とてもかっこよかった。しかし、紅葉はきれいな人だと前は思っている。

「……いつになったら、言えるんだろう」

前はため息をつく。紅葉のことで何度ため息をついたかわからない。

紅葉に告白しようと思うたびに、ネガティブな考えが心を支配して口が動かなくなってしまうのだ。

紅葉は、守ってくれるような人が好きに違いない。前の心の中に、そんな思いがまた生まれる。

「お〜い!図書室もう閉めていいかな?」

前が顔を上げると、少し困ったような顔の司書さんがいた。

「す、すみません!」

前は慌てて荷物をまとめ、図書室を出る。図書室に最後までいたのは前だけだった。