前は泣くまいとぐっと唇を噛み締める。それでも、収まることのない嫌がらせに今にも泣きそうになった。

前は、幼稚園の頃からいじめられっ子だ。強い男子にいじめられ、しょっ中泣いている。

体が弱く、小柄。弱虫で内気。自然界に放り出されれば、一瞬で淘汰されてしまうだろう。

そんな前を救ってくれる人は、いつだってたった一人だ。

「あんたたち!くだらないことはやめなさい!!」

その強気な声に、前の鼓動が高鳴る。振り向くと前よりも背が高くショートカットの女の子が腕組みをしながら立っていた。

「げっ!めんどくせぇのが来たぜ…」

男子たちは顔をしかめる。女子は顔色を変えることなく近づく。

「面倒で結構!で?あんたらは何してるわけ?」

低いトーンで女子が言うと、男子三人は悪口を言いながら去って行った。本は、女子の手の中だ。

「前!大丈夫?」

女子が振り返り、前に近づく。

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

前が微笑むと、女子も嬉しそうに笑う。