通りがかったいじめっ子たちがからかう。優しい目をしていた紅葉は目の色を変え、いじめっ子たちを睨みつけた。

「人が何を好きでいてもいいでしょうが!!」

前は、いじめっ子たちと対峙する紅葉を見ているといつも思う。

人のために動ける紅葉は、きっと世界で一番美しい花だと……。



「前くん!新しい本が入ったよ〜」

放課後、いつも通りに前が図書室に行くと、司書さんが嬉しそうに本にカバーをかけていた。

「どんな本なんですか?」

読書が好きな前は、顔を輝かせながら司書さんから本を受け取る。それは、偉人たちの名言集だった。

前は、どんな言葉があるのだろうとドキドキしながらページをめくる。そして、時が止まったような気がした。

「生きる確率が五十%もあるなら、僕は迷わずパラシュートで降りて、写真を撮りに行く」

「怖いのは、はじめだけ」

「心配ならば私たちは行動を起こすべきであって、憂鬱になるべきではない」

「英雄は普通の人よりも勇気があるのではなく、五分間ほど勇気が長続きするだけの話だ」