ガラガラガラーーー。
医者
「椿ちゃん、大丈夫かい?」
椿
「……あ!寺内先生だ!」
医者
「その額の傷だね、ほら、ここ座って早く見せてごらん。」
椿
「……はい。」
寺内 涼(てらうち りょう )、専門は精神科医で椿の母の担当医でもある。
椿のことを自分の妹のように大切に思っている。この時は休憩中だったにも関わらず椿の診察券をみて急いで仕事に戻ってきた。
寺内
「大した傷ではないみたいだね、よかったよかった。」
椿
「……縫わない?」
寺内
「あはは(笑)縫わない、縫わない。……縫いたい?」
椿
「……冗談でしょ……っ!(笑)」
優しく微笑む寺内を見て、椿は少しホッとした。額の手当てをしながら寺内が尋ねた。
寺内
「学校はどうだい?」
椿
「まぁまぁ、かな……。」
寺内
「お友達はできたかい?」
椿
「…………。」
寺内
「椿ちゃん、いいかい?無理に周りに合わせなくたっていいんだよ。きっと自分の事を本当に理解してくれる友達がそのうちに出来るさ。」
椿
「……うん、ありがとう。」
・・・何だか、久々に自分を知ってくれてる人と話した気がする……。落ち着くなぁ。
寺内
「お母さんの方は……調子はどうだい?」
椿
「……まぁ、平気。」
寺内
「……そうか、心配だな……最近診察にいらしてないみたいだから。」
椿
「ごめんね先生、次会った時に必ず伝えておくから。」
寺内
「あぁ、頼んだよ、椿ちゃん。」
久しぶりに馴染みの顔を見てほっとした椿は、とても明るい表情をしている。年齢差を全く感じることなく話せる寺内を、椿はまるで自分の兄のように慕っている。
そう、彼は椿の……初恋の人だった。
