佐古
「軽い切り傷みたいだな……痛むか?」



椿 
「当たり前じゃんよ」



佐古
「じゃあ行くぞ、忘れ物ないな?」



椿 
「はい」



佐古
「…………。」




 何かを言おうとしてやめた佐古は、自分の手を椿から離し、車のハンドルに置いた。その手の感触が額から離れ、椿は少し寂しい気持ちになった自分に気がついた。エンジンを掛け、ゆっくりと車を走らせる佐古の横顔を見ることができなかった。
入学式の話、佐古の初恋の話、好きな科目と嫌いな科目……。いくつかの話題が飛び交い、椿は退屈しなかった。あっという間に二人の乗る車は病院の前に着き、椿は先に車を降り佐古が駐車場に車を止めている間に受付に行き診察券を通した。
その日は患者の数が少なく、五分と待たないうちに自分の名前が呼ばれた。





   『おいかわ、つばきさーーん、2番診察室にどうぞー』






・・・変な医者だったら嫌だな。

ってかこんな傷、絆創膏貼っとけば治るだろ………。