佐古に触れられたあの瞬間の事を思い出す時、度々胸が熱くなった。だが今の椿にはまだ、それがなぜなのか、どういう意味なのか、全く理解出来ずにいた。ただ分かっていることは、自分が少しずつ、何かを感じ始めているという事。そしてそれはきっと………あの担任に対して。 それから椿は毎日学校に通い、家に帰っては課題を片付け、久しぶりに忙しい日々を過ごした。誰も居ない大き過ぎる家で一人、ただ黙々と自分のやるべき事に没頭した。「やり遂げてみたい…。」その思いが、何よりも彼女をその気にさせた。