・・・私、何で泣いてるんだろう……。
冷たい手…………だけど心が温まる…………。
……ドキっ………………。
佐古
「………大丈夫か?」
何も言わずにコクリと頷く椿の頭をそっと撫で、佐古は言った。
佐古
「曲げられねぇ生き方があるならそれでいい。もしその途中で辛いことがあったらいつでも来い。誰にも見せられねぇ涙があるんだったら、俺が拭いてやるから。……だから一人で我慢するな。」
・・・何それ……いや、そういうの要らないから。友情ごっことか、面倒くさい。他人に弱みみせるのとか、無理。
椿
「私には誰も……必要ない。」
佐古
「お前、死ぬまでそうやって強がってる気か?」
椿
「あんたには関係ない……帰る。」
佐古
「………気を付けて帰れよ。」
佐古とは目を合わさずに席を立ち、教室を出た。他人に、それもよりによって嫌っていたあの担任に涙を見せた自分が許せなかった。
・・・信じられない、人前で泣くなんて……しかもあの担任の前で。
椿は少し不機嫌なまま昇降口に着くと下駄箱からローファーを取り出す。その時一枚の紙切れが落ちた。
椿
「……何だこれ。」
『死ね、きもい消えろ。もう二度と来るな。』
椿
「嫌がらせか……くだらん。」
紙切れを丸めて玄関の淵に置いてあるゴミ箱に捨てた。
・・・何かもう、どうでもよくなってきた。明日から来るのやめようかな。
見上げた空は、寒く透き通った冬の空。ふと頬に触れてみる。冷たいが、あの心の温かみを感じはしなかった。
・・・じゃあ、あの時に感じたのは、何だったんだろう……。
