しかし和重は「悪い」と言い、生に手を差し伸べている。


生もその手を取って立ち上がったため、安堵の雰囲気が教室内に流れた。


「お前のパンチいつも強いんだよ」


「少しは手加減したんだぞ？　本気でイジメないとダメみたいだしなぁ」


スマホを操作しながら和重が言う。


「今ので大丈夫なんだと思う？」


あたしは誰とでもなく、そう聞いた。


隣に立っていた渚は「わからない」と、首を振っている。


だけど３組の教室内はいつもの雰囲気に戻り、思い思いの時間が流れ始めていた。


「あ、アプリから通知が来たよ」


美文にそう言われて、あたしはスマホを確認した。


イジメ.COMからのメールで、イジメ動画が登校された事を知らせていた。


確認してみると、さっきの映像がアプリ上に投稿されているのを確認することができた。


この動画だけ見れば和重が生を思いっきり殴っているように見える。


その後の展開は、もちろん映されていなかった。


「このくらいでOKなら、全然平気だな」


３組からは生のそんな声が聞こえてきていたのだった。