「うおーおおぉぉぉー!!」俺は意味不明の叫びをあげ、下り坂をかけ下りる!!

 つまずきかけて、更に勢いを増して坂を下る!!

 犬たちは、さすがに飼い主を気にしてか立ち止まる。

 教室の二つ目の窓が開いた!!

 「やべぇ!!」

 榊原が窓から顔を出しキョロキョロ周りを見渡す!!

 信号が青にかわった!!

 「よしっ!!間に合う!!」

 俺は下り坂からの勢いそのままに道路を渡る!!

 工事用の大型トラックが右折してきた。

 俺はトラックの方をチラリと見た。

 トラックはスピードを落とさなかった。

 トラックは更にアクセルを踏み込んだようだ。マフラーから、黒煙がふきだしている。

 上り坂なので、トラックはスピードを落としたくないようだ。

 「しまった!!俺は透明人間だった!!」

 トラックからは無人の横断歩道にみえるのだ!!

 ブォーーーとエンジン音が鳴った瞬間俺は本能的にジャンプした。

 トラックフロント上部のひさしに俺の首が当たった。

 途端にトラックが斜め下方に見えた。景色がクルクル回る。

 俺の教室も見える。

 トラックは止まり、車線左に寄せ、停車した。

 俺の教室が再び見えた。俺は口でフーフー息を吐き、気分的に耳をパタパタさせ、教室に向かうよう、空中調整した。

 景色がクルクル回り、下方では、トラックの運転手がおりてきた。

 俺は必死に教室の窓から飛び込もうと口をいがませ、息をフーフー!!

 下方では、横断歩道ほぼ中央に俺の胴体が、雨と血で、型どられていた。

 目に何か液体が入り、目が痛い!!

 景色がクルクル回り、教室の窓が一瞬近くに見えた。

 俺の頭は、回転し、高く高く3階にある俺の教室近くまで舞い上がったようだ。


 「会田さん」「はい」

 「井上さん」「ハイッ!!」

 「いいねえ。井上さんはいつも元気ですねぇ」

   
 もう出欠を取り始めていた。

 俺の目の前に教室の窓がきた。

 先生!!もっとゆっくり出席をとってくれえー。

 俺の視界は教室の中にはいった。

 俺の顔は、クルクル回転しながら、教室の天井に近づいた。

 「さて、高校生活無遅刻無欠席完全出席の大西、大西敦さん……」

 「……」
  
 俺の頭はクルクル回り、なんとか教壇の方に向かった。
 

 「声が小さいのが、たまにきずの……」

 先生は、教室内を見渡した。

 「大西、大西、あ⋅つ⋅し無遅刻無欠席の、お⋅お⋅に⋅し……」


 俺はもう透明人間というあだ名を付けられないように、

トラックのしたにある俺の肺いっぱいに空気を吸い込み、

大声で叫ぶように言った。

 「ハイッ!!」

 その時、血と汗と雨で顔の輪郭を取り戻した俺の頭は、くるりと教壇の上に着地した。そして更に深呼吸をし、眼を見開いて俺は叫んだ。

 
 「大西敦!!只今参上!!」