心をなくした女神

190cmほどの身長で、黒い短髪。
耳からは小さいピアスが見えている。




「綾人」




私がそう呼ぶと、彼はにっこり笑って白い歯を見せた。

笹野宏太は私と綾人を交互に見つめる。




「俺は3年の西野綾人」

「1年の笹野宏太です」




彼は立ち上がって頭を下げた。

まだ私たちの関係を不思議そうに見ながら眉をしかめている。




この人は1週間前に私に声をかけてきて
無視されようが何を言われようが、めげずに私を引っ張り出そうとする。

友達でもなんでもないが、綾人はいい距離感だけを保ってくれた。




「姫、なんで昨日来なかったのさ」

「約束してない」

「ちぇっ、今日は待ってるから来てよね」




綾人は「強制だから」と言って屋上から出ていく。

そう言われても私は行かないから、ムキになって怒ってくるけど気にしない。




「今日は待ってるって?」




綾人が見えなくなり、見えない姿を指さして質問してくる。




「知らない」

「彼氏?」

「違う、あの人嫌い」



つじつまのあわない関係性に「はぁー?」と間抜けな声を出す彼。

私は手の砂をはらい、柵をまた乗り越える。

そろそろ帰るか。

そう思いながらオレンジにじわじわ染まっていく空を見上げた。