心をなくした女神

廊下じゃ人も多いし、笹野宏太の取り巻きが多いため場所を移した。

誰も使わない屋上。

使わなくても綺麗に整備がこなされていて、隅にはソーラーパネルなどが置かれている。


笹野宏太は「この辺かな」ってつぶやくと、私に背を向けた。




「見たって何を…」




問いかけると、彼は空を見上げていた。




「入学式終わった時、確かここにいたよね!」

「なんでそれを」

「ごめん俺も来たんだ」



風で揺れる髪と、制服。

1週間前のことを思い出すかのように、彼は遠い目をしていた。




「渡瀬さんも、笑えるじゃん」




私に笑いかける彼の笑顔は綺麗だった。






あの時_____



私は1人屋上で空を見ていた。

雲の形、飛行機、太陽。


私を裏切ることのない純粋なものをただじっと…。

時間が過ぎるのも忘れるくらい見ていて、自然と心が緩んだんだ。




「俺一瞬にして、渡瀬さんのファンになっちゃった」



まさか笑ってるのを見られてたなんて。

動揺のせいで、心臓がバクバクとしている。




「だから俺、ずっと渡瀬さんと仲良くなりたくて」

「そんなの嘘」




私は冷たい目で彼の顔を見た。

さっきの動揺もすべてかき消して、自分の黒い気持ちだけを湧き出させる。




「嘘じゃないよ、だって俺は」

「結局あなたも一緒、私を人形や物としか扱ってない!」




手を強く、皮膚なんか張り裂けるんじゃないかってくらい握りしめた。

誰も、私になんか深入りしてこなかったのに。

なんでこの男は踏み込んでくるの。



私なんか…。




「私と一緒にいると、不幸になるよ」




私は歩き、屋上の柵を飛び越えた。

「おいっ!」

呼び止められるが、私は耳を向けない。

校庭が全部見渡せる場所までで足を止め、その場に座って足を伸ばした。