意を決して発した声は、星野くんに小さな笑いとともに迎えられた。

「聞こえてるよ、何?」


「ほーかご、お話があります。時間をください!」


ばっという効果音が出そうな程に頭を下げる。

カタンと椅子を鳴らした星野くんが静かに答えた。


「わかった。放課後ね」


それから自分がどのように日常にとけ込んだかは覚えていない。

ただ、つつがなく、授業時間は過ぎ去り、とりとめのない話を千歳達としたお昼休みも終わり、刻々と放課後は近づいた。



緊張で爆発するかもなどと思っていた自分が、割と冷静なのに驚いた。

世界は私の決心に関せず、日常というコマを送り続けているからかもしれない。


しんと広がった湖のように静まった私の心は、ホームルームの先生の一言で乱れることとなった。

「本條さん、じゃあ委員会、よろしくね」


(え?)


「え」と声に出さなかったことは我ながら上出来だと思う。

湖にぽちゃんと石が投げ込まれたかのように心が波立った。

「はい、わかりました」

それだけをかろうじて口から搾り出す。