すると、星野くんは視線を紙に落としたまま大きくふーっと息を吐いた。

「何だ。そっかー」

そして目が合った。

「オレに言いたいことはないの?」

何でそんなこと聞くのだろう。そんなこと一つしかないのに。言ってもどうしようもないのに。


(星野くんと私じゃ住む世界が違いすぎる。それでも・・・・・・っ)


「星野くんと、もっと話したい」

更に小さな声で絞り出した。

メガネの奥で、星野くんが笑ったような気がした。

「じゃあ、また朝早く来てよ。地味にキズついたよ。オレとは話したくないのかな・・・って」

そういってメガネに触れる。

「そんなことない」


(そんな訳ない。こんなに好きなのに!!)


「そんなことないよ・・・・・・」

嬉しさがごちゃまぜになった気持ちで胸がいっぱいになった。


「そっか・・・・・・」


それから無言のままで、デッサンの時間は過ぎていった。