何の抑揚もなく、いつかの朝、楽しく過ごした時間の星野くんとは別人のような声音だった。

いや、私がそう感じただけかもしれない。

「行こっか、本條さん」

八坂くんはそう言うと、私の美術の用意を小脇に抱えた。

「え、自分で持つよ」

「いいっていいって、おわびおわび、運ばせて」

さあ行こうと明るく言う八坂くんに、おそるおそるつき従って歩く。

星野くんは、そのやりとりを見ていただろうが、無言で教室を出て行った。


(わけがわかんない・・・・・・)


私の心は途方に暮れていた。


美術室について、先生に小言を言われてから席に着く。

出席番号順に座ると、私の席は星野くんの後ろだった。


「じゃあ今日は人物画を描きます。前後でペアになって。奇数番号の人は後ろを向いて描いて下さい」


星野くんが椅子をずらして、私の方へ向きを変えた。

メガネの奥の視線は動かず、無表情で何を考えているかわからない。


(おこって・・・る?)