「えっ!?
洋介、辞めるの??」

年の近い洋介と彰人は、仲良しだ。

友達として離れることはないが………

学生からずっと一緒に仕事をしていただけに、不安そうだ。

「その事なんだけど
洋介、会社員にならないか?」

「「はぁ?!」」

たしかに、パン屋の経営者に会社員を勧めるのは

どうかと思う。

「パン屋の仕事は続けてくれて構わないけど………
今より忙しくなると思う。
俺達の仕事を…………手伝ってくれない?」

俺の提案に

「いいじゃん!!
洋介、やろう!!」と笑顔になる彰人。

プッ!

笑う俺と洋介。

裏の仕事を始めた時

やはり彰人は、あの顔で同じように

「いいじゃん!!
洋介、やろう!!」と言ったのだ。

家庭の愛情が薄かった彰人。

俺以外に初めて気を許せた相手が、洋介だった。

大学を卒業してバラバラになることを覚悟していた

このメンバーが………

仕事という繋がりで、続いていくことが嬉しかったようだ。

今回、俺が洋介を誘ったのも

もちろん、俺が助けて欲しいというのが一番の理由だが

彰人の為でもあるのだ。

仁科の会社に入る覚悟をしてくれた彰人。

だが、本心はかなり不安なはずだ。

俺がサポートするのは当たり前だが……

仕事を始めたばかりで…………

咲の事も考えると…………

彰人の側に洋介は、必要だ。