「笹兄!!」

午後から訪れたささ。

夕方の仕事まで家で咲と過ごすようだ。

「俺も圭哉みたいに、仕事休もうかなぁ。」

普段仕事に行ってる咲が、家にいることが嬉しいらしく

そんなムチャを言う。

『店を辞める』とか言っていたが

このままでいくと…………

辞める前に潰れそうだ。

俺もささも甘いと分かっているが

咲に合わせて仕事をしているからなぁ。

「ささ、店………たたんでも良いぞ。
さささえ良ければ、仕事はあるし。
いずれは、咲にも手伝って欲しいと言ってるから。」

俺の言葉に、ピンときたみたいで

「家を…………継ぐのか?」と聞いてきた。

正直、まだ迷ってる。

あの大きな会社を、簡単に継げるとも思ってない。

兄貴が社長、親父が会長の間に専務につけと言われている。

だが、そんなイスを用意されてノコノコ継ぐ気はない。

苦労も知らずになった上司のいる会社で

誰がが好き好んで仕事を頑張るかだ………。

俺が社員なら無理だ!

社員のやる気を削ぐようなやり方で仕事をしても

上手くいくわけない。

もう何年もそう繰り返し言い続けた。

だから、俺は自由に生きてきた。

これからももちろんそうするつもりだったが

咲の出現で考えさせられた。

きれい事だけでは………咲は手に入らない。