「圭ちゃん、どうしよう。」

自転車を前に、不安そうな咲。

「どうしたぁ~?」

今さら自転車が怖い??

不思議に思って聞くと

「指輪をして自転車に乗れないよぅ。
だってこれ……………
スゴく高価でしょう?!
傷つけたら大変だも~ん。」

プロポーズで涙するかと期待したのに…………

まさか、ここで泣き顔を見せるとは…………。

「ダイヤは、磨くのに使うくらい硬いんだ。
ちょっとやそっとじゃ傷なんてつかないよ。
気にせず喜んで嵌めてくれ。」

俺の言葉に、渋々つけたまま自転車に乗っている。

「いつか子供を連れて………
またここに来ような。」

自転車を漕ぐ背中に向けて呟くと

「圭ちゃ~ん。
海がキラキラ光ってる!!」と嬉しそうに振り返った。

海より眩しい笑顔。

この笑顔を守っていこう。