見合いの時間を30分とし

俺は、親父達の待つロビーに急ぐ。

そこには、すでに用意の済んだ二人と

仲人らしき人物が談笑していた。

「オゥ!
圭哉、中畑夫妻にご挨拶を。
こちらは、議員秘書をされていらっしゃる中畑夫妻だ。
今日は、お前の為に一肌脱いで下さった。
ご自分の先生のお嬢さんを紹介して下さるんだから
粗相のないようにしろよ。」

ここで初めて、見合いだと匂わす親父。

代議士先生と縁戚関係を結びたいと

こちらの秘書さんに頼み込んだのだろう。

たぶん、こちらも親父達から

多額金銭を握らされているはずだ。

「はじめまして、次男の圭哉です。
本日は、私の事で会長が無理をお願いして………
申し訳ありません。
中畑様のお力をお借りしたいと思いますので
宜しくお願いいたします。」

親父達の満足のいく対応だったらしくて

ホクホク顔で部屋に促す。

ボーイが扉を開けると

既に着席していた夏苗ちゃんとご両親が

立ち上がって出迎える。

今日は、幼稚園のカジュアルな姿とも

みんなで過ごす時の可愛いらしい雰囲気とも違い

振り袖に身を包み

おしとやかな…………

まさにお嬢様だった。

さすが、根っからのお嬢様は違うな。

あまりの化けようにクスリと笑えば

「知った顔にホッとしたようだな。」と

勘違い甚だしい親父が、口を開いた。