「ただいま」 そう言いながら、リビングに入る。ちょうど夕食の準備をしていた母が微笑みながら「おかえり」と俺を見つめる。美味しそうな匂いが俺の鼻をくすぐった。 「今日の夕食は何?」 「パスタだよ」 ――ブラビッシモ! パスタ、と聞いた瞬間、俺の脳裏にイタリア語で素晴らしいと言いながら微笑んだ笹井先輩の姿が浮かんだ。 「そう言えば、風雅はどの部活に入るの?ちゃんと部活は入りなさいよ」 母の言葉を聞いた時、俺の夢で描いていた青春は音を立てて崩れ去ったような気がした。