「ああっ!」

エドガーは、目前で起こった光景に目を奪われ茫然とその場に立ち尽くした。

ロニィが背にして立つ扉の古代文字が、怪しい光を放ち、一字一字が実体を持ちフワフワと浮かび上がったのだ。

その異変にも動じず、ロニィは瞼を閉じたまま、ゆっくりと両腕を広げた。


その刹那…。

浮かび上がった古代文字は、無数の石つぶてに変ずると、ブンブンと不気味な音を立て空中に四散し、ロニィめがけて襲いかかった。


ビュッ!ブシュッ!ブシュッ!

石つぶてが肉体を貫く音が、鈍く響いた。
ロニィの身体から霧のように噴き出す鮮血は、地に降り積もった真っ白な雪に赤い無数の花を咲かせた。


「ロニィーーッ!」

エドガーの悲鳴に瞼を開けたロニィは、彼に穏やかな笑みを向けると、糸の切れた操り人形のように、ゆっくりとその場に倒れた。
ロニィの傷口から溢れ出る暖かな血は、石畳の溝を伝い、閉ざされた扉を染め上げていった。



ゴッ…ゴゴゴゴゴッ


それは、にわかには信じがたい光景だった。

彼の血を吸い尽くした巨大な扉は、内側から何者かの意志が働いているかのように、ゆっくりと開いた。