チリチリと痛い程の緊張が漂う中、ロニィは古代文字に長く美しい指をなぞらせ、一心不乱に解読を進めた。


(ふん…やっぱりな。)

彼は大きく息を吐き、扉に触れていた手をパタリと下ろした。


「ロニィ、扉を開ける呪文が解ったんだね!」

エドガーが、嬉しそうに飛び跳ね彼に駆け寄ろうと一歩を踏み出した。


「そこから動くな!」

ロニィは、エドガーを鋭い声で一喝すると、開かずの扉を背にクルリと彼に向き直り、口元に冷酷な笑みを浮かべた。
その笑みは、見る間に顔全体に広がり、彼は聞く者を不快な気分に陥れるヒステリックな声で、ゲラゲラと笑いはじめた。


「あははっ、もう限界だな。下手な猿芝居はこの辺までにしよう。今まで許嫁として振る舞ってきたが、それもおしまいだ。」

「えっ?」

「エドガー、悪いがお前との恋愛ごっこはここで降りさせて貰う。」

「降りさせて貰うって…それ…どういうこと?」

ロニィの予期せぬ言葉がまだ理解できず、エドガーは唖然として彼に尋ねた。