「随分高いところまで登って来たね。」
「ああ、頂上までは後半分だ。」

「後半分かぁ。それにしても暑っついね。」

「まるで真夏だな。蝉まで鳴いてやがる。」

ロニィはシャツを脱ぎ、身体の汗を拭きながらぼやくとフゥと息を吐いた。

その拍子に、肩の薔薇の痣がフワリと揺れた。
彼の痣に視線を奪われたエドガーの表情が僅かに曇る。

「夕方までには神殿につきたいな。食事は歩きながら済まそう。」

そう言いながら、ロニィは次々と食料を出した。
エドガーの手には、よく冷えたレモネードとスモークサーモンのサンドイッチが現れた。


(ふふっ、ロニィったら僕の大好物を覚えててくれたんだ。)

彼は、腕に抱えた沢山の食料を覗き込みながら幸せそうに微笑んだ。
その様子を横目で見ながら、ロニィはハニーバタートーストを黙々と口に運んだ。


それから三時間、ひたすら険しい山道を進んだ。
頂上に近づくにつれ、再び気温は下降し、辺りは雪と氷に閉ざされた。

白い息を吐きながら、二人はツルツルと滑る岩肌をよじ登り、パックリと深い口を開けたクレパスを飛び越えとうとう山頂に到着した。


「あーっ、やっと着いた!ここが頂上だね。そして…これが古代の神殿。」

「…。」

二人は目前に聳える巨大な神殿を仰ぎ見た。
それはまさに神の住む場所だった。
大きな石を積み上げ作られた八本の石柱の奥には、重厚な一枚岩の扉が彼らを待ち受けていた。


パチン

ロニィが指を鳴らすと、眩しい光がエドガーを包み込んだ。