「あら、色男さん、昨夜の疲れはとれたかい?」

ロニィが階段を駆け足で降りてくると、女将が帳場から締まりのない笑みを浮かべ、声をかけてきた。
食堂の一角で、ミルクを飲んでいるエドガーを見つけ、急いで彼女の側へ行こうとしていたロニィは、ギクリとして足を止め、女将の方を振り返った。

「ふん、なんだか目に覇気がないねぇ。それにしても、アンタみたいな客は初めて見たよ。お楽しみの後に、娼婦に向かって“ありがとう”なんて大声で叫ぶんだから…。」

「…。」

「あたしゃあ、びっくりして目がテンになっちまったよ。」


(…このおしゃべりババァ、余計な事を!エドガーに聞こえるだろ!)

エドガーの反応が気になり、ロニィは落ち着かない気持ちを抑えつつ、精一杯の作り笑いを女将に投げつけると、大急ぎで混み合う通路をカニ歩きで進んだ。


「おはよう。」

ロニィは、自分でも気持ちが悪くなるような甘ったるい笑顔を浮かべながら、エドガーの向かいの椅子に腰を下ろした。