「ロニィ、さっきは貴方のことを馬鹿って言ったけど、あれは…嘘。」

「…。」

「今の貴方の気持ちはきっと彼女に伝わるわ。でもね、ロニィ…それであのは幸福になれるのかしら?」

「…。」

「幸せになることを諦めては駄目よ。貴方には私のように後悔をして欲しくないの。」

「リーゼ…。」

「必ず…幸せになってね。」


そう言うと、リーゼは“じゃあね”と手を振り軽やかな足取りで階段を降りていった。

「あっ!」

ロニィは慌てて、踊場の手すりに駆け寄り、身を乗り出して叫んだ。


「ありがとう!」

宿の玄関のドアに手を掛けたまま彼女は振り返り、ニッコリと微笑んだ。
その笑顔は、気高くとても美しかった。