Fake!!(フェイク)~漆黒の魔導師と呪われた乙女の物語~

「あ~あ…つまんないの。」

粗末な部屋に一人取り残されたエドガーは、つまらなそうに呟くとホゥと小さく溜息をつき、ベッドに腰掛け暫くの間、煤だらけの天井を見つめていた。

「第三の課題…古代の神殿。その神殿の扉を開けたら、僕達は幸せになれる…ロニィ、そうだよね?」

ロニィを信じられないのではない。ただ…時々言い知れない不安に襲われるのだ。

「最近のロニィはなんだかとても寂しそうなんだもん。側にいないと急にどっかへ行っちゃいそうで、とっても心配になるんだ…。」

再び大きな溜息が可憐な唇から漏れる。
「変身する僕を見るのが辛いって言ったってさ…。」

確かに、元の姿に戻る時の、体がバラバラになるような痛みは、10年たった今でも慣れるものではない。
むしろ、体が成長するに従って痛みは強くなっている。


(でも、今は痛みだって我慢できる。)

「大好きなロニィのお嫁さんになる日まで…きっと耐えてみせる!」

だから、ロニィは悲しい顔をしないで。
いつもみたいに皮肉たっぷりな口調で僕をからかってよ。



「それにしても、遅いな~。夕食を貰いに行くのになんでこんなに時間がるのかな。僕、もうお腹ペコペコだよ。」

ベッドから立ち上がると、荷物のポケットをゴソゴソと掻き回す。


「あった♪」

取り出したのは、水色に輝く氷飴の欠片だった。

「へへっ、いただきま~す!」

飴をポーンと空中に放り、エドガーは器用に口でそれを受け止めた。