「それで、貴方が私の今夜のお相手?」

ロビーの女達を押しのけ、一人の女がロニィの前に立った。
透けるような白い肌、胸元まで開いた真紅のドレス。
豊かな黒髪は華奢な両肩に緩やかに流れ、その髪に覆われた小さな顔の中で黒い黒曜石のような瞳が、ランプの灯りをユラユラと反射し、神秘的な輝きを放っていた。


(へぇ、こいつは掃き溜めに鶴。息を飲む美人ってやつだな。)

ロニィは心の中で驚きの声をあげた。


「ああ…。宜しく頼む。」

「宜しく頼むって…そう言われてもねぇ。まぁ、私もお金を頂いてお相手するんだから、十分な満足を与えられると思うけど…。」

「…。」

「ねぇ、一夜限りとはいっても恋人気分で過ごした方がいいでしょう?貴方の名前…教えてくれない?私の名前は、リーゼ。」

「俺はロニィ。」

「ロニィ…素敵な名前ね。」

ロニィの名を呟いて、リーゼはニッコリと微笑んだ。
だが、彼女の微笑はこの場所では酷く不釣り合いで、痛々しさすら感じる美しさを秘めていた。