「わかった!」

ロニィはエドガーを抱きかかえると、オレンジ色のランプが輝く宿屋に大急ぎで駆け込んだ。


バターン!

「悪りぃ!急いで部屋を用意してくれ!」

「あいよ…。あらぁ、なぁにお兄さん、色男が男色の趣味なんて勿体無いねぇ。」

「あーっ、そんな話はいいから、早く鍵!鍵!」

「はぃはぃ。」


チャリン

宿屋の女将は取り付く島のないロニィの態度に、つまらなそうに厚塗りの化粧に彩られた顔をしかめ、真っ赤な唇を突き出すと、二階の奥の部屋の鍵を彼に放ってよこした。


「どうも!」

ロニィは礼もそこそこに鍵を受け取ると、階段を二段抜かしでドタドタと駆け上がっていった。


「あーあ、まだ若いっていうのに…あんな子供相手にさぁ…なんだか世も末だねぇ。」

ロニィの背中を見送りながら、女将は大袈裟に肩を窄め、ロビーにたむろする娼婦達に目配せした。
と同時に沸き起こる、女達の甲高い笑い声…。


「畜生!勝手な事を言いやがって、俺はノーマルだっつーの!」

ロニィは錆び付いて良く廻らなくなった鍵をガチャガチャと乱暴にこじ開けながら悪態をついた。