ヒュゥゥゥゥ


吹き荒ぶ吹雪の中、頭の先からつま先まで水分を含んだ重たい雪に覆われ、まるで雪だるまの様な格好の二つの人影。
彼らは、『ようこそ、旅人の楽園オーランドへ』と書いたボードを掲げている下着姿のグラマラスな女性の大きな看板が、半ば雪に埋まって立っているのを見上げていた。


「…旅人の楽園オーランドか…。レオルドの奴、夕方には余裕で着くなんて簡単に言いやがったが…随分と遠かったじゃないか。途中で荷馬車に拾って貰えなかったら日没前には着かなかったな。」

「ほんとに…ギリギリセーフだったよ。ねぇロニィ~、早く宿に入らなきゃ僕、変身しちゃうよ!」

凍りつき、束になった睫を瞬たかせ、鼻水をすすり上げながら、二人はオーランドの街の門を早足でくぐった。


「とりあえず宿ったって…この街の宿屋は連れ込み宿ばっかだな。」

「連れ込みって、娼婦とかがたくさんいる所だよねぇ。なぁんだ、旅人の楽園ってそういう意味だったんだね。」

「あぁ…困ったな…。まともな宿は一軒もなさそうだ。」

「いいよ、もうなんでもいいよ!ロニィ、僕…もうマズイかもしれない…。」

エドガーは、変身の兆候が現れ始め、酷く具合が悪いらしくロニィに向かって訴えた。