(気に入らねぇ怪力チビめ、何をジロジロ見てやがる!)

横目で奴をジロリと睨み付け、俺は鼻の上に皺を作り歯をむき出した。

「ガキくさっ!」

エドガーが口を開いた。可愛い顔をしているくせに、奴の口から出る言葉は棘があり、聞く者の神経を逆なでする。

「うるせーな、生意気な口をたたくんなら、口の回りのクッキーのカスを何とかしたらどうだ!」
「!!!」


(ふん。バーカ!テメェの方がガキじゃんかよ。)

慌てて口元を手の甲で拭っている奴の様子を見て、俺は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。


バタン!

何の前触れもなく、客間のドアが大きな音を立てて開け放たれた。

「おお、これはこれは!ロニィ・シーブリース殿!我が家へようこそ!」

ドデカイ声を張り上げながら、髭モジャの大男が俺の方へズンズンと近づいてくる。
腰のベルトには大剣クレイモアが揺れている。
(さすが騎士様ってか…。あーあ、嫌だねぇ。あんな大仰なもん見せつけやがって…って…痛っ!)

エドガーの親父は奴以上の怪力で俺の両手を握り潰した。

「痛てぇぇぇぇ~!こんなの握手じゃねーだろぅ?」

真っ赤に鬱血した両手にヒール魔法を掛けながら俺はいたって健全な男だよ。男色の趣味はないんでね。この話は無かったことにして貰うぞ。」

俺は親父を指さし、鼻息も荒く抗議した。

「いやいやいや、心配ご無用。我が家のエドガーは…実はこう見えても19歳。カップリングには全く問題はありゃあせんよ。」


(は?はぃぃぃ?)


ガッターン

俺は驚いて椅子のバランスを失いそのまま後ろへひっくり返った。

「じゅっ、19歳って!どう見たって10歳じゃないか。冗談はやめてくれよ!」

痛む後頭部をさすりながら俺は、椅子を起こし再び腰を下ろした。