そうだ…そうでなくてはならない。
エドガー…俺は何としてもお前の望みを叶えてやる。
だから…今は少しでも長くお前と一緒に過ごせる時間を俺にくれないか…。



「ねぇ、なに一人で黄昏てんの?」

「うわぁっ」

「あれで僕を部屋から締め出したつもり?窓が全開でしたぁ♪残念だったね~。この次は窓にも鍵をかけとかなくちゃね。」

「…そうだな。助言に感謝するよ…。」


ポォン

エドガーが、勢いよくベッドに飛び乗り、俺の隣に腰を下ろした。

「ロニィ、漆黒の森から帰ってからずっと様子がおかしいよ。急に優しくなったかと思えば、今みたいに突き放したり…。おまけに、夜の僕には会ってもくれない。」

「…。」

「原因は真実の鏡でしょ?あれに何が映っていたの?僕にもちゃんと説明してよ。」

「…。」


「何もなかったよ。あの鏡には俺の死んだ両親が映っていたのさ。彼らが俺の想像していたイメージとは少し違っていた…だから取り乱したんだよ。…それだけだ。」

「…ロニィ…。」

「すまなかった。心配かけたな…。もう悩んだりしないよ。」

俺は、努めて自然な笑顔で微笑んだ。


「ホントに?ホントに本当?」

「ああ…。」


ギュッ

小さな両腕が俺の身体を抱きしめた。
暖かな温もり…穏やかな時間…。
俺はソッと目を閉じた。

両の瞼に柔らかな唇が押し当てられた…。


「それじゃあ…また後でね。」

エドガーは照れくさそうに微笑むと、爪先でクルリと回れ右をすると、足取りも軽く部屋から出ていった。


「ありがとな…。」

その言葉を聞く相手はもういないのに…俺はドアに向かって小さく呟いた。