「こら!ヘッポコ魔導師、いつまでここに転がっているつもりだ?いい加減に起きろ!」


(レオルドか…うるせぇな…。俺は疲労困憊なんだ…もう少し寝かせろ。)

俺は、奴の怒声を振り払う様に首を振ると、ゴロリと寝返りを打った。


「この野郎、俺様を無視するなんて十年早いんだよ!」

いよいよ本気で頭にきているレオルドの、激しい蹴りが一発、俺のみぞおちに炸裂した。

「ううっ。」

俺は呻き声を上げると、鉛の様に重たい体を起こした。

「ロニィ、大丈夫?」

聞き慣れたボーイソプラノ。
9歳の赤毛の少年が、見かけとは反比例する怪力で、俺の体をしっかりと支えた。


(ああ…なんだ…エドガー、又ガキに戻ったのか…。)

俺は、大きな溜め息をつき、周りを見渡した。

どうやらここは、王宮の中庭らしい。
それにしても、おかしな光景だ。
俺は、見事に切り裂かれたベルベットの半円の中心に横たわっていたらしい。


「なんだ…こいつもFakeかよ。漆黒の森はお前んちの庭じゃねぇか。」

「ああ、そう言うことだ。このドーム…結構金がかかっていたらしいのだが…お前の彼女がメチャクチャに壊してくれたぞ。この落とし前は、どうつけてくれるんだ?」

その言葉と裏腹に、レオルドはこの状況を楽しむ様な表情を浮かべた。