「ねぇ、ロニィ!ロニィってば!」

エドガーの叫び声で、俺は浅い眠りから引き戻された。

「何だよ。うるせーな。折角いい気持ちで寝てたのに。」

「だって…ロニィ、この鏡変なんだよ。鏡面に僕の顔が写らなくなったんだよ。」

「まさか!そんな馬鹿馬鹿しい事があるものか。」

俺は、エドガーから鏡を受け取り、ギラギラと輝く鏡に自分の顔を映した。



「なんだって!…そんな…。」

鏡を持つ手がブルブルと震えた。


(馬鹿な!俺はこの森の魔力にあたったんだ…こんな事があってたまるか!)


カシャーン!

鏡は俺の手から滑り落ち、粉々に砕け散った。


「ロニィ、ロニィ…どうしたの?ねぇっ!」

エドガーが俺の腕を掴み、揺さぶりながら何か言っている。
訳が分からない…取り乱した俺の耳には奴の声が低くくぐもるだけで、聞き取ることができなかった。



「エドガー、すまない…手を放してくれ!」

俺は、エドガーの手を振り払うと、森の奥へヨロヨロと走り出した。
両目に熱い物が溢れ、視界がかすんだ。
節くれだった木の根に足を取られ、俺はもんどり打って地面に倒れた。


「…クソッ…何でだよ…。」

乾いた土を握りしめ、俺は額を地面に打ちつけた。


「エドガー、俺達は三つの課題を…クリアする事は出来ない…お前の呪いは決して解けない。」

これが絶望なのか…。
それとも恐怖なのか…。
俺は、血が滲む程何度も拳を地に打ちつけ、低く呻いた。