「…それにしても、さっきの剣捌きには驚いたな。」

「ああ…あれ?だってさぁ…女とはいえ、騎士の家に生まれたからには、父上の名に恥じぬ位の腕は身につけておかないとね。」

「ふん。なる程ね。お互い生まれ落ちる先は選べないからな。」

「ロニィだって、魔法の腕…凄いじゃない!僕、ロニィのそんな所尊敬してるもん。沢山勉強したんでしょ?」

「そうしないと生き延びられなかったからな。孤児の俺にはこうする以外…生きる術を知らなかった。」

「……。」

「やめやめ!俺の話なんか聞いたって何も面白くねぇよ。それよりも星の欠片を探そう。」

俺は、大袈裟に肩を竦めると、エドガーに背を向け夜空を仰いだ。

「ねぇ、王様がくれた真実の鏡…あれで星の欠片を探す事は出来ないのかな?」

「真実の鏡?ああ…これか?」

俺は、ローブのポケットから、粗末な作りの鏡を取り出した。

「ちょっと貸して…。こうやって星明かりを反射して、星達に光を当ててみたらどうかなぁ?もしかしたら、本当の美しさを持つ星の欠片なら…反応してくれるかも。」

そう言いながら、エドガーは俺の手から鏡をもぎ取り、星達に光を反射させた。


…何の反応もない…。
それでも、エドガーは飽きることなく何度も同じ事を繰り返している。


(あんな怪しげな鏡、あてになるもんか。)

俺は魔法で椅子を出すと、それに腰掛けエドガーの姿を目で追っていた。


(…くだらねぇな。)

大欠伸を一つ。
目尻に浮かんだ涙を指先で拭い、俺は腕組みしたまま瞼を閉じた。