カサカサッ

紙のような下草を踏みしめながら、俺とエドガーはランプの灯りと星明かりを頼りに切り絵の木々の中を進んだ。


「ねぇ、ロニィ、星の欠片ってどんな物なの?」

「さあな…そこらの星の中に紛れ込んでいるんだろうが、俺にも見当がつかねぇよ。」

「…てことは、あの星達を片っ端から調べていくしかないの?なんか、不毛な作業だねぇ。」

腰に氷の剣を携え、赤毛を長い三つ編みに編んだエドガーは、俺の答えに眉をひそめてうんざりした表情を浮かべた。


(全くだ…こうして歩いていても全く現実味がない空間…こんな所に本当に秘宝が隠されているのかよ…。)

俺は頭の中で、グルグルと考えを巡らせた。


「ロニィ、危ない!」

突然俺は、エドガーに突き飛ばされ、地面に転がった。


ガキィィィン

目の前に、灯りの消えたランプが転がり、その先で星明かりに照らされたエドガーが、黒い人影と剣を交えていた。


(あいつ…。)

剣がぶつかり合い、鍔迫り合いを繰り返す度に、星にも劣らぬ火花がチカチカと暗闇に飛び散る。
そして、冷たく輝く氷の剣を操るエドガーの横顔は、戦神の様に凛々しく美しかった。


「お主ら、この漆黒の森に何用で参られた!」

黒い影が叫ぶ。

「僕達は怪しい者じゃない。王様の許しを得てここへ来たんだ!」

刃を受ける手を緩めず、涼しい表情のまま、エドガーが答える。

「何?レオルド国王の?それではお主が持っているのは氷の剣か?」

人影は、エドガーの剣に視線を移し、それを確認すると、レイピアを鞘に収めた。

「お二人とも、とんだご無礼をして申し訳ない。例の課題で参られたのか…。私はこの森の護人(もりびと)カルロと申します。」

カルロと名乗った黒い人影は、そう言いながら目深に被ったローブを後ろへ跳ね除けた。