「う…ん。」

俺は涼しい風に頬を撫でられ、目を覚ました。


(ふう…なんせ朝がこない森だからな、昨日眠る前は、今朝目覚めるか心配だったが…何とか起きられたな。)

さて、起きようか…。
俺は体を起こそうと身じろぎした。
右腕が重い。

「うわっ!」


(エドガー、お前、いつの間に~!)

エドガーは、俺の腕を腕枕にスヤスヤと気持ちよさそうな寝息をたてている。


(うう…腕が…腕が痺れて…。)

俺は、エドガーの頭の下から乱暴に腕を引き抜こうとした。
だが…結局はそいつを止め、その代わりに、左半身を起こすと、彼女の寝顔をマジマジと見つめた。
瞼を縁取る長い睫は白い頬に影を落とし、薔薇のような唇は、キスを誘うように魅力的で…それはお伽話の絵本の挿し絵にある、眠り姫の様だった。


「こうやって眺めている分には、いい女なのにな…。」


(眠り姫か…。)

そんな事を考えていたら、急に不安になった。
エドガーが、このまま目覚めないのではないか?


(まさか!)

我ながら、何の根拠もない不安だと思いつつ、俺は彼女の頬にそっと触れた。

暖かい…。

俺は、ホッと胸を撫でおろし微笑んだ。


ズキッ

胸が苦しくて…痛い。