「あ…。」

豊かなフリルに縁取られたドレスの裾を持ち上げ、エドガーは少し戸惑っていたが、やがてはにかんだ笑顔を俺に向けた。

ズキン!

再び胸に痛みが走った。

「ありがとう!ロニィ!」

言うが早いか、エドガーが油断していた俺の胸の中に飛び込んで来た。


(うわぁ!)

俺は、エドガーに弾き飛ばされる事を覚悟して、きつく瞼を閉じた。


トンッ


(あれっ?)

意外な感触だった。
思い切り俺の胸の中に飛び込んで来たはずなのに…。
エドガーの当たりは普通の女性の体を受け止めた時の感覚と同じだった。

「なぁ…いつもの怪力はどうした?」

「え?あれ…そういえば…僕、どうしちゃったんだろ。」

「…。」


(エドガーの怪力が消えた?これがこの森が秘めた力なのか?)

油断は出来ないって事か…。
ここにはまだまだ計り知れない呪いがかかっていると見て間違いないな。


(簡単には秘宝を渡してくれないって事か…。)

俺は首を横に振り、エドガーを体から引き剥がした。

「…とにかく、飯だ。今夜はゆっくり眠って、宝探しは明日にしよう。」

「そうだね。」

エドガーは、スカートを膝までたくしあげると、大股で歩きながら答えた。



(ちえっ、折角のドレスが台無しじゃないか。)

俺は、その後ろ姿に軽く舌打ちすると、ささやかな晩餐が乗ったテーブルに向かった。