「あれ、どうかしたの?ロニィ?」

俺の様子に驚いたエドガーは、流れ星を放り出して駆け寄ってきた。


「何でもない。大丈夫だ…。それよりお前、腹減ってないか?」

「あ!そういえば…お腹空いた!もうペッコペコ!ねぇねぇ、ロニィ、チャチャッと何か魔法で出してよ。王様の所でやったみたいにさぁ。」


(あーあ…これが19歳の乙女の言う言葉かぁ?色気の欠片もねぇや…。)

「分かったよ。待ってろ。まずは…テント一張り!」

パチン!


「次は、暖かな毛布二枚と椅子!」

パチン!


「最後は、焼きたてのライ麦パンとエンドウ豆のスープ、子牛のリブステーキっと…後は、赤ワインでも飲むか?」

パチン!


「うわっ、すごい!すごーーーい!」

エドガーは、俺の魔法に興奮しながら手を叩いている。


(ふん、どうだ!驚いたか!褒めてくれたのがアイツってのが気に入らないが…仕方ないか。)

なんだか腹の底がモヤモヤとくすぐったくて、俺はソワソワと落ち着きなく地面の小石を蹴った。

「…そうだ、忘れてた。お前もいつまでもネグリジェ姿じゃ可哀想だ。なぁ、どんなドレスが着たい?」

「ええっ?」

「だからさ、お前の好みを聞いてるんだよ。」

「どんなったって…僕…ドレスなんて着たことないし…。」

エドガーは、困り果て顔を赤らめると俯いた。


(そうか…、夜に女の姿に戻っても眠るだけの毎日か…。着飾って街を歩く事も、舞踏会へ行く事も、コイツには出来なかったんだな。)


「よし!それじゃあ俺がお前に似合うドレスを見立ててやるよ。」

パチン!

エドガーが光の粉に包まれた。
やがて、粉が消えると、彼女は髪を美しく結い上げ、胸元が大きく開いたスミレ色のシルクドレスを纏った姿に変わっていた。